「毎月の試算表は見ているけれど、正直、どの工事が儲かっているのかは分からない」。建設業の社長からよく伺うお悩みです。決算書の数字は把握していても、「原価管理」となると何から手をつければよいか分からない、という会社は少なくありません。
この記事では、建設業の原価管理で最初に見るべき5つの数字と、その見方を整理します。
結論:原価管理は「5つの数字を見る習慣」から始める
原価管理というと難しく聞こえますが、最初にやることはシンプルです。会計ソフトを入れ替えたり、細かく記帳する仕組みを作ったりする前に、まずは5つの数字を「見る習慣」をつくること。ここが整っていないまま高機能なシステムを入れても、十分に活かすことはできません。

なぜ「会社全体の数字」だけでは足りないのか
月次の試算表を確認し、決算も税理士に任せている。数字自体は把握できている。ただし、それは「会社全体」の数字であって、「工事ごと」の数字ではありません。
工事が終わるたびに「今回は良かった」「今回はギリギリだった」という感覚はあっても、数字として残っていなければ次の見積もりに活かせません。結果として、同じような失敗を工事を変えて繰り返してしまいます。
原価管理は経理の仕事と思われがちですが、本来は経営判断のための道具です。「どの工種が強いか」「どこで利益が削れているか」が見えると、次に受ける仕事の選び方まで変わってきます。
原価管理システムを入れても使いこなせない理由
「原価管理システムを導入したが、結局使いこなせていない」というご相談も多くあります。お話を伺うと、システムそのものの問題というより、「何を見るために入れたのか」が曖昧なまま導入しているケースがほとんどです。見たい数字を先に決めてからでなければ、どれほど高機能なシステムでも宝の持ち腐れになってしまいます。
建設業の原価管理で、まず見るべき5つの数字
① 工事ごとの粗利
会社全体の利益ではなく、1件1件の工事でいくら残ったか。ここが分からないと、利益の出る仕事とそうでない仕事の区別がつきません。「なんとなく忙しかった工事」ほど、実は粗利が薄かったというのはよくある話です。
② 実行予算と実績原価の差
見積もり段階で組んだ実行予算と、実際にかかった原価がどれだけズレたか。ズレの大きい工事には必ず原因があります。材料費が上がったのか、追加工事が多かったのか、見積もり自体が甘かったのか。ここを振り返るだけで、次の見積もりの精度が上がります。
③ 労務費率
原価に占める人件費の割合です。適正な水準は工種によって変わりますが、「この種類の工事は毎回労務費が膨らむ」という傾向が見えてきます。段取りの悪さが数字に表れているケースも少なくありません。
④ 外注費率
外注に出している比率です。外注が悪いわけではなく、自社施工とのバランスが取れているかを見る数字です。外注に頼りすぎて粗利が薄くなっている工種が見つかることもあります。
⑤ 未回収の代金
工事は終わっているのに、まだ入金されていないお金です。ここが積み上がると、利益は出ているのに手元にお金がない状態になります。「黒字なのにお金がない」というご相談の多くは、実はここに原因があります。

Excel1枚・手書きのノートからでも始められる
いきなり全部を完璧にやろうとする必要はありません。まずはこの5つを、工事が終わるたびに記録するところから始めるだけで、見える景色は大きく変わります。Excel1枚で十分ですし、手書きのノートでも構いません。大切なのは、続けられる形で見る習慣をつくることです。
仕組み化やシステム化は、そのあとで十分です。5つの数字を工事ごとに並べてみると、「この工種は毎回粗利が薄い」といった気づきが自然と出てきます。
5つの数字は、サウナでいう「温度計」
この5つの数字は、サウナでいえば温度計のようなものだと考えています。温度計がなくてもサウナには入れますが、「今日はぬるかった」「効きすぎた」を数字で振り返れるかどうかで、次の入り方は大きく変わります。原価管理も同じで、数字があるからこそ次の一手を決められます。

まとめ:まずは5つの数字を工事ごとに並べてみる
- 原価管理は、難しい記帳の仕組みを作ることから始めなくてよい
- まず見るべきは、①工事ごとの粗利 ②実行予算と実績原価の差 ③労務費率 ④外注費率 ⑤未回収の代金
- Excel1枚・手書きでもよいので、工事が終わるたびに記録する習慣をつくる
この習慣ができれば、システム選びも経営判断もぐっと進めやすくなります。「工事別の利益が見えない」「Excel管理が特定の人に頼っている」という段階でも、まずは今の管理方法を整理するところからお手伝いします。

