2026年10月1日から、北海道の最低賃金は時間額1,131円になりました。これまでの1,075円から56円の引き上げです。ニュースで金額は見ていても、「自社の人件費が実際にいくら増えるのか」まで計算できている会社は、まだ多くないのではないでしょうか。
この記事では、最低賃金の引き上げによる人件費の増加額を概算する計算式と、ChatGPTなどの生成AIを使って数分で試算する方法を紹介します。
結論:人件費の増加額は「人数×引き上げ幅×労働時間」で概算できる
最低賃金の引き上げによる人件費の増加額は、次の式でまず概算できます。
対象になる人数 × 時給の引き上げ幅 × 想定労働時間
社会保険料の会社負担分などまで含めた正確な数字は、顧問の社労士・税理士に確認する必要があります。ただ、「どのくらいの規模になるか」という桁感をつかむだけなら、この式で十分です。

計算例:時給1,075円の従業員が5人いる場合
たとえば、時給1,075円で働く従業員が5人、1人あたり月160時間勤務している会社の場合です。
- 1人あたりの月額増加:56円 × 160時間 = 8,960円
- 5人分の月額増加:8,960円 × 5人 = 44,800円
- 5人分の年間増加:44,800円 × 12か月 = 537,600円
時給がすでに1,100円など、旧最低賃金と新最低賃金の間にある従業員がいる場合は、「1,131円との差額」で同じように計算します。
ChatGPTに頼めば、条件を伝えるだけで試算できる
従業員ごとに時給や勤務時間が違う場合でも、生成AIに条件を伝えれば、数分で概算を出せます。たとえば次のように依頼します。
> 「最低賃金が1,075円から1,131円に上がりました。時給1,075円で働いている従業員が5人、1人あたり月160時間勤務です。月額・年間の人件費増加額を計算してください」
1人あたりの月額増加分から、全体の月額・年間の合計まで、数字で返ってきます。時給が異なる従業員が混在していても、条件を書き並べれば計算してくれます。
ただし、AIが出した数字は必ず計算式で検算してください。AIは計算を誤ることもあります。AIの役割は、自分で「だいたいいくらになるか」を先につかみ、専門家への相談を的確にすることだと考えています。
賃上げの原資は「価格転嫁」と「生産性向上」をセットでつくる
人件費の増加額が分かったら、次はその原資をどうつくるかです。参考になるのが、厚生労働省「働き方改革特設サイト」で紹介されている、宮城県の有限会社大柳電気(従業員10名)の事例です。
同社は、部品の値上げなどで利益率の悪化が懸念される中、工事単価を引き上げ、あわせて生産性の向上にも取り組みました。その結果、工事量は対前年比20%増となり、前年並みの利益を確保できる見通しが立ったことで、10月の昇給と1月の業績手当の支給を予定しているとのことです(出典:厚生労働省「働き方改革特設サイト」有限会社大柳電気の事例、2025年3月25日掲載)。
注目したいのは、利益が大きく増えたわけではなく、コストが上がる中で、価格転嫁と生産性向上をセットで行い、前年並みの利益を守りながら賃上げの原資をつくったという点です。
環境が変わったら、入り方を調整する
最低賃金の引き上げは、サウナでいえば「水風呂の温度が変わった」ようなものです。環境の変化そのものは止められません。大切なのは、変化に向き合い、自分の入り方、つまり値付けや生産性を調整することです。何も変えずに我慢し続けると、どこかで無理が出ます。
「払えるかどうか心配」で止まるのではなく、先に数字で影響を把握し、価格転嫁や生産性向上とセットで考える。そこまでやって、初めて次の一手が見えてきます。

まとめ:まず自社の増加額を数字で把握する
- 北海道の最低賃金は、2026年10月1日から1,131円(56円の引き上げ)
- 人件費の増加額は「対象人数 × 時給の引き上げ幅 × 労働時間」で概算できる。AIに頼めば数分で試算できるが、必ず検算する
- 正確な数字は社労士・税理士に確認し、賃上げの原資は価格転嫁と生産性向上をセットで考える
賃上げを後押しする制度(業務改善助成金など)もありますが、対象要件や申請期間は年度・地域によって変わります。利用を検討する場合は、必ず最新の公募情報を確認してください。人件費の増加を踏まえた経営計画や、使える補助金・助成金の整理は、「うちの場合はいくら増えるのか知りたい」という段階からご相談いただけます。


