DXの話になると、「紙とExcelはもうやめましょう」とよく言われます。しかし、支援の現場でさまざまな会社を見ていると、これは必ずしも正しくないと感じています。
シリーズ「社長のためのDX」の2回目は、紙やExcelを使い続けてよい業務と、デジタル化すべき業務の見分け方を整理します。
結論:問題は紙やExcelではなく「二重入力」と「属人化」
紙やExcelそのものが悪いわけではありません。問題なのは、次の2つです。
- 二重入力:同じ情報を何度も書き写している
- 属人化:その人しか使い方や中身が分からない
この2つさえ整理できれば、紙やExcelを使い続けても問題ないケースは、実はたくさんあります。
「とりあえず全部クラウドに」が失敗しやすい理由
DXの提案でよくあるのが、「まず紙をやめて、Excelもクラウドのシステムに置き換えましょう」というパターンです。しかし、月に数件しか発生しない業務のために高額なシステムを入れても、コストに見合わないことがほとんどです。
一方で、毎日のように大量に発生し、しかも複数の人が関わる業務が、いまだに紙とハンコで回っている場合は話が別です。ここは変える価値が大きい部分です。
つまり大切なのは、「紙かデジタルか」ではなく、その業務の回り方を見ることです。
デジタル化すべき業務を見分ける2つの基準
基準1:同じ情報を何度も書き写していないか
見積書の内容を発注書に書き写し、さらに請求書にも書き写す。紙の日報をExcelに打ち直す。こうした転記は、手間がかかるうえに、書き写すたびにミスが入り込む余地が生まれます。転記が多い業務ほど、デジタル化の効果は大きくなります。
基準2:特定の人しか対応できない状態になっていないか
「このExcelは〇〇さんしか触れない」「この書類の作り方は〇〇さんしか知らない」。こうした状態は、その人が休んだり辞めたりした瞬間に業務が止まるリスクを抱えています。紙かデジタルかにかかわらず、まず手順を見える形にすることが優先です。
この2つの基準に当てはまらない業務であれば、紙やExcelのままでも十分なケースが多くあります。
自分に合った「ととのい方」があるのと同じ
サウナでたとえるなら、「サウナに入らなければととのわない」わけではなく、人それぞれに合ったととのい方があるのと同じです。デジタルに置き換えることが目的なのではなく、面倒な部分を減らすことが目的です。

まとめ:変える業務を「2つの基準」で選ぶ
- 紙やExcelは、それ自体が悪者ではない
- 見るべきは「同じ情報を何度も書き写していないか」「特定の人しか分からない状態になっていないか」の2点
- この2つに当てはまる業務から、優先してデジタル化を検討すれば十分
業務の流れを書き出して優先順位をつける手順は、中小企業のDXはシステム選びから始めない。導入前にやるべき3ステップでも紹介しています。「何を残して、何を変えるべきか分からない」という段階でも、まずは今のやり方を一緒に整理します。
シリーズ「社長のためのDX」
- ① 「DX」という言葉を使わずに、現場のデジタル化を始める方法
- ② 紙とExcelは悪者ではない。デジタル化すべき業務を見分ける2つの基準(この記事)
- ③ ツールを1つ入れる前に決めておくべき3つのこと
- ④ 定着しないDXに共通する、たった1つの原因




